その1:瓜二つの魔法使いたち?ドゥンストとレルネンのそっくり劇場
広大で長い歴史を持つ『葬送のフリーレン』の世界では、時折驚くほど容姿が似た人物が登場します。その中でも特に注目を集めているのが、一級魔法使い試験編で登場した
ドゥンストとレルネンです。
今回は、この「そっくりさん案件」をテーマに、二人の魔法使いを徹底的に比較・分析していきます。まずは、彼らの驚くべきコミカルな雰囲気の共通点を見ていきましょう。
ポイント別ビジュアル比較:そっくりさんの分解ショー
ドゥンストとレルネンのビジュアルは、まるで生き別れの兄弟か、あるいは未来の姿かと思わせるほど酷似しています。
【①威厳の口髭】
二人とも、思慮深い人物であることを物語るような、手入れの行き届いた立派な口髭をたくわえています。
ドゥンストの髭は、幾多の戦場を潜り抜けてきた実戦派魔法使いの風格を感じさせ、一方のレルネンの髭は、大陸魔法協会の歴史そのものを体現するような、大魔法使いの威厳を漂わせています
【②流麗なる長髪】
どちらも後ろに流したストレートの長髪が特徴です。

アニメ版ではドゥンストが黒髪系、レルネンが年齢を重ねた白髪として描かれており、これが数少ない視覚的な違いとなっています。まるで「威厳ある髭の魔法使い」の制服でもあるかのようなこの髪型は、彼らの類似性を一層際立たせています
【③魔法使いらしい佇まい】
二人とも冷静で物静かな立ち振る舞いが多く、その落ち着いた雰囲気は熟練の魔法使いであることを示唆しています。この共通のストイックな態度が、外見のそっくり度をさらに高める要因となっています。
ファンの声:混乱と憶測の交差点

この二人のそっくり具合は、読者や視聴者の間でも格好の話題となりました。SNSなどでは、以下のようなユーモアあふれるコメントや憶測が見られます。
・「一級魔法使い試験編でレルネン様が変装して潜入捜査してるのかと思った(笑)」
・「ドゥンストはレルネンの若い頃の姿っていうタイムスリップ説、誰か唱えてない?」
・「この二人が並んだら、フリーレンでも一瞬見間違えそう。」
これらの反応が示すように、二人の類似性は物語の隠れたスパイスとして機能しています。
しかし、このそっくりな外見は単なる偶然やギャグなのでしょうか。実は、この視覚的な共通性こそが、二人の本質的な違いを浮き彫りにする巧みな演出なのです。
同じような見た目のキャラクターを並べることで、読者は自然と彼らを比較します。その結果、片や現代の有能な二級魔法使い、片や歴史に名を刻む伝説的な最初の一級魔法使いという、天と地ほどの格の違いが明確になります。
つまり、この「そっくりさん案件」は、『葬送のフリーレン』の世界がいかに深く、階層的であるかを示すための、計算された物語装置と言えるでしょう。
その2:見た目は似て非なる二人 -内面の徹底比較-
前半で見たように、ドゥンストとレルネンの外見は瓜二つですが、その内面、すなわち経歴、能力、そして人間関係は全く異なります。ここからは分析的な視点で、二人の本質的な違いを深く掘り下げていきます。
まずは、二人の基本スペックを一覧で比較してみましょう。
| 項目 | ドゥンスト (Dunst) | レルネン (Lernen) |
| 等級 | 二級魔法使い | 一級魔法使い |
| 所属 | 一級魔法使い試験 受験者 | 大陸魔法協会, ゼーリエの弟子 |
| 世代・年齢 | 現役世代(年齢不明) | 老齢、デンケンと同期 |
| 主な能力 | 実戦的な判断力、複製体の特性看破 | フリーレンの魔力探知、ゴーレム作成、高度な戦闘魔法 |
| 決定的な関係性 | エーデル(試験の仲間) | ゼーリエ(師)、エーレ(孫と推測) |
ドゥンスト:試験を生き抜く現実主義者

ドゥンストは、現代を生きる現実的で有能な魔法使いの象徴です。彼は一級魔法使いという特権を目指す、数多くの受験者の一人として描かれています。
彼の人物像が最も色濃く表れるのが、一級魔法使い試験での仲間、エーデルとの関係性です。第一次試験で第17パーティーとして組むことになった彼らの関係は、あくまで試験合格という共通目的のための、プロフェッショナルな協力関係でした。

この関係性が試されたのが、第二次試験の舞台「零落の王墓」です。
彼らは試験官ゼンゼの複製体という絶望的な脅威に直面します。精神魔法の専門家であるエーデルは、複製体に精神魔法を試みますが、「心」を持たない複製体には通用せず、致命傷を負ってゴーレムで脱出することになります。
一方、ドゥンストもパーティーが壊滅する中で辛くも生き延び、フリーレンたちの許へたどり着きました。

彼の最大の功績は、この絶体絶命の状況から得た情報を正確に伝えたことです。
彼はフリーレンに対し、「複製体は完璧なコピーだが、“心”がない」という決定的な弱点を伝えました。これは、彼が強力な攻撃魔法の使い手というよりは、冷静な観察眼と判断力で困難を乗り越える、クレバーなサバイバーであることを示しています。
彼とエーデルの関係は、共に死線を乗り越えた「戦友」としての絆で結ばれていると言えるでしょう。
レルネン:歴史を背負う最初の一級魔法使い

ドゥンストが「現代の有能な魔法使い」であるならば、レルネンは「生ける歴史そのもの」です。彼はただの一級魔法使いではなく、大魔法使いゼーリエの最初の弟子にして、大陸魔法協会が認定した最初の一級魔法使いという、伝説的な存在です。
レルネンを語る上で欠かせないのが、師であるゼーリエからの
「臆病な坊や」という評価です。

しかし、これは決して彼が弱いという意味ではありません。むしろ、彼の強さの本質を突いた言葉と解釈できます。
レルネンは、魔王さえ欺いたフリーレンの魔力制限をただ一目で見抜くほどの傑出した魔力探知能力を持ち、第二次試験で使われた複雑な脱出用ゴーレムを開発し、さらには七崩賢マハトと渡り合うほどの戦闘能力を誇ります。
これらの事実を踏まえると、ゼーリエの言う「臆病さ」とは、人間としての自らの限界と死を正しく理解し、無謀な戦いを避ける「賢明さ」や「慎重さ」を指していると考えられます。
この思慮深さがあったからこそ、彼は熾烈な権力闘争が渦巻く宮廷魔法使いの世界を生き抜き、老齢に至るまでその地位と実力を保ち続けることができたのです。
また、レルネンは物語の後半、「黄金郷編」でも重要な役割を果たします。
ここで注意すべきは、ユーザーの関心事である「エーデルとの関係」です。

エーデルは一級魔法試験の際にはドゥンストと第17パーティーの仲間という関係でしたが、黄金郷編ではなんとレルネンとも会話をしている場面が描かれております。
しかし黄金郷編では、二級魔法使いエーデルがデンケンにマハトの記憶を提供する場面がありますが、レルネンとこのエーデルとの間に詳細な関係性は描かれていません。
レルネンの役割は、デンケンがその記憶を解析する時間を稼ぐため、マハトと対峙し足止めすることでした。彼の関係性は、作戦全体や同期であるデンケンに向けられたものであり、このエーデルとの関係性が分かるような描写はありません。
レルネンの人間性を深く知る上で最も重要なのが、同じく一級魔法使い試験の受験者であったエーレとの関係です。
作中の描写から、
エーレはレルネンの孫である
と強く推測されています。

第一次試験中、船酔いを心配する仲間のヴィアベルに対し、エーレが
「私のお爺ちゃん紹介しようか? 一級魔法使いだから陸路で…」
と提案する場面があります。そして試験後、彼女がレルネンを仲間たちに紹介する姿が描かれており、この説を裏付けています。
この祖父と孫の関係は、歴史上の偉人として描かれがちなレルネンを、一人の人間として血の通った存在にしています。

彼が持つ慎重さや生存への意志は、単なる自己保身ではなく、愛する家族のために生き抜きたいという願いの表れなのかもしれません。
この関係性は、物語の通底音である「世代」「継承」というテーマを補強し、レルネンというキャラクターに深い奥行きを与えているのです。
さいごに:ドゥンストとレルネンの見分け方講座

さて、ここまで二人の外見的な類似性と、内面的な大きな違いを分析してきました。最後に、このそっくりな二人を確実に見分けるための、実践的なガイドをまとめてみましょう。
決定版「見分け方」ガイド
【その1】場面と時代背景を確認する:
物語の舞台は一級魔法使い試験の真っ最中ですか?
であれば、それはドゥンストの可能性が高いです。
一方、ゼーリエが関わる大陸魔法協会の最高レベルの案件や、黄金郷を巡る歴史的な事件に関わっているなら、それはほぼ間違いなくレルネンです。
【その2】魔力の格と能力を見る:
目の前の人物は、有能ながらも地に足のついた観察や報告をしていますか?
それはドゥンストです。
対して、フリーレンを警戒させ、巨大なゴーレムを創造し、七崩賢と渡り合うほどの超常的な力を見せつけているなら、それはレルネンの格です。
【その3】一緒にいる人物に注目する:
「儂」や「のじゃ」という言葉を使う少女風の魔法使い(エーデル)とスキンヘッドの男性(ブライ)と行動を共にしていますか?
それはドゥンストで第17パーティーです。
魔法学校主席の優等生(エーレ)から「お爺ちゃん」と呼ばれていれば、それはレルネンです。
【その4】敬称と呼び方を聞く:
周囲から特に敬称なく呼ばれていればドゥンストです。
しかし「レルネン様」といった敬称で呼ばれたり、伝説的な人物として語られたりしている場合はレルネンです。
ファンによる見分け方のポイント
ファンたちの間でも、ユニークな見分け方が確立されつつあります。
- 「一番簡単な見分け方は、エーレちゃんが『お爺ちゃん』って呼ぶかどうかだよね」
- 「アニメだと髪の色が違うから分かりやすい。ドゥンストは黒髪系、レルネン様は白髪」
- 「オーラが違う。ドゥンストは『やり手の中間管理職』で、レルネン様は『創業者一族』って感じのオーラ。」
ドゥンストとレルネンという、そっくりでありながら全く異なる二人の存在は、『葬送のフリーレン』の巧みなキャラクター造形と世界観構築の証左です。
単なる視覚的なギャグから始まり、読者をより深い物語の考察へと誘うこの仕掛けは、世代の移り変わり、魔法の歴史の深さ、そして力の多様性を見事に描き出しています。
彼らのそっくりな容姿はデザイン上の欠陥ではなく、物語をより豊かにする、計算され尽くした魅力的な「特徴」なのです。



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