~勇者ヒンメルの死から20年・27年後の歩み~
物語の主軸となるのは、かつて魔王を討ち果たしたエルフの魔法使い・フリーレンと、彼女の新たな旅の仲間たちが織りなす「人の心を知る旅」です。
今回は、その長い旅路の中でも特に重要な転換点となった期間、
「勇者ヒンメルの死から20年後~27年後」の出来事
に焦点を当ててご紹介します。
この7年間は、フリーレンがかつての仲間たちとの「過去の記憶」を整理し、新たな弟子フェルンと共に「現在の時間」を歩み始める、非常に情緒深く、また物語の根幹に関わる重要な時期です。
第1章:聖都シュトラール郊外 ~隠遁の司教と継承の儀~

(時期:勇者ヒンメルの死から20年~24年後)
1.1 再会と新たな出会い(ヒンメル死後20年)
登場箇所:原作1巻第2話 / アニメ第1話・第2話
勇者ヒンメルの死から20年が経過したある日、フリーレンは中央諸国の聖都シュトラール郊外を訪れます。
そこには、かつての冒険仲間であり、聖都の司教として人々を導いた「生臭坊主」ことハイターが隠居生活を送っていました。 晩年のハイターは、賑やかな聖都の喧騒から離れ、森の中の質素な家で静かに暮らしていました。
そこでフリーレンが出会ったのは、ハイターに拾われ育てられていた戦災孤児の少女、フェルン(当時9歳前後)でした。
ハイターは自身の死期を悟っており、残されるフェルンの身を案じていました。しかし彼は、フリーレンが「弟子の寿命による死別」を恐れて弟子を取りたがらないことを熟知していました。
そこでハイターは策士らしく、ある「嘘」をついてフリーレンを引き止めます。
それは、「不死の魔法」や「死者蘇生の魔法」が記されているとされる『賢者エーヴィヒの魔導書』の解読依頼でした。
ハイターはこの解読に「数年はかかる」と見込んでおり、その期間を利用して、フリーレンのそばでフェルンに魔法修行をさせようと画策したのです。
フリーレンもまた、「5、6年はかかる」と分析し、ここに奇妙な共同生活が始まりました。
1.2 託された想いと別れ(ヒンメル死後24年)
登場箇所:原作1巻第2話 / アニメ第2話
シュトラール郊外での生活は4年間に及びました。
この間、フェルンはフリーレンの指導(あるいは黙認された観察)の下、魔法使いとしての才覚を現していきます。特に、魔力の制御技術においては、フリーレンが気づかないほど気配を消して岩を撃ち抜くまでに成長していました。
そしてヒンメルの死から24年後、ハイターがついに倒れます。
フリーレンは魔導書の解読を終えていましたが、そこには不死の魔法など存在せず、すべてはフェルンをフリーレンに託すためのハイターの優しい「詐欺」であったことが明かされます。
「フェルンを連れて行ってほしい」 それがハイターの最期の願いでした。フリーレンは、4年間の生活でフェルンの努力と資質を見届けており、その願いを聞き入れます。
ハイターが旅立った後、フリーレンは彼の墓前に好きだったお酒を供えます。かつての仲間を見送った彼女は、新たな弟子フェルンと共に、あてのない旅へと出発しました。
第2章:中央諸国ターク地方 ~蒼月草と記憶の修復~

(時期:勇者ヒンメルの死から26年後)
2.1 忘れ去られた英雄の像
登場箇所:原作1巻第3話 / アニメ第2話
ハイターとの別れから2年後、フリーレンとフェルンは中央諸国のターク地方を訪れます。
ここはのどかな農村地帯ですが、かつて勇者ヒンメルが魔物を退治し、村を救ったという歴史がありました。
しかし、26年という歳月は人々の記憶を風化させるには十分すぎました。
村に建てられていたヒンメルの銅像は錆びつき、見る影もなくなっていたのです。 フリーレンたちは、地元の薬草家の老婆からこの銅像の清掃を依頼されます。
ここでフリーレンが使用したのは、旅の道中で集めた民間魔法の一つ「銅像の錆を綺麗に取る魔法」でした。一見役に立たなそうな魔法が、英雄の尊厳を取り戻すために役立つ瞬間でした。
2.2 幻の花「蒼月草」を求めて
銅像を綺麗にしたフリーレンは、その周りに花を植えようと思い立ちます。
彼女が選んだのは、ヒンメルの故郷の花である「蒼月草(そうげつそう)」でした。 蒼月草は青く発光する美しい花びらを持つ花ですが、ターク地方では数十年前に絶滅したと考えられており、幻の花となっていました。
フリーレンたちはこの花を探して、なんと半年もの時間をこの村で費やすことになります。フェルンにとっての半年は長い時間ですが、フリーレンにとっては「ちょっとした寄り道」に過ぎません。
この時間感覚のズレにフェルンは苛立ちを見せますが、フリーレンは諦めませんでした。
2.3 花冠の約束
手がかりを見つけたのは、種を隠す習性を持つ「シードラット」という小動物の存在でした。彼らが隠した種が、廃墟となった塔の屋上でひっそりと群生していたのです。
満開の蒼月草を見つけたフリーレンは、かつてヒンメルと交わした会話を思い出します。
「いつか君に見せてあげたい」
そう語っていたヒンメルとの約束を、彼の死から26年越しに果たすことができたのです。
フリーレンは魔法で銅像の周りを蒼月草で満たし、さらに花冠を作って銅像の頭に乗せました。それは、かつての冒険でヒンメルがフリーレンにしてくれたことへの、時を超えた返礼でした。
第3章:交易都市ヴァルム ~甘味と蝶の装飾~

(時期:勇者ヒンメルの死から27年後)
3.1 賑わう街とフェルンの成長
登場箇所:原作1巻第4話 / アニメ第3話
旅を続けてさらに1年、一行は中央諸国の交易都市ヴァルムに到着します。
ここは物流の拠点として栄え、多くの商店や飲食店が並ぶ活気ある都市です。平和になった世界を象徴するかのようなこの街で、フリーレンたちは冒険の合間の休息をとります。
この街での大きな出来事は、フェルンが16歳の誕生日を迎えたことです。
出会った頃はまだ幼い9歳の少女だったフェルンも、今や立派な「レディ」へと成長していました。フリーレンが「私よりも背が伸びたね」と驚くシーンは、エルフと人間との成長速度の違いを視覚的に、そして少し寂しくも温かく表現しています。
3.2 蝶の髪飾りとメルクーアプリン
二人は旅の物資を手分けして調達することにしますが、フリーレンの様子が変なことに気が付くフェルン。余計な買い物をするだろう推測し、フェルンはフリーレンの後を追いました。
露店や酒場、街の人々に話しかけながら、フリーレンは街中を歩いて回っていました。フェルンは自分の買い出しを思い出しフリーレンから離れ、用事を済ませて宿に戻ると、フリーレンから「甘いものでも食べに行こう」と提案されます。
実はフリーレンは、フェルンへの誕生日プレゼントを選ぼうとしていたのですが、何を贈ればいいのか分からず、一人で考え探しまわっていたのです。
そしてフリーレンが最終的に選んだのは蝶の意匠が施された金属製の髪飾りした。
蝶は「変化」や「成長」の象徴とも言えます。少女から大人へと美しく変わっていくフェルンにふさわしい贈り物となりました。この髪飾りは、後の旅路でもフェルンが愛用する大切なアイテムとなります。
また、二人は街のレストランで食事を楽しみます。フリーレンが注文したいデザート「メルクーアプリン」をフェルンが見事言い当てると、フリーレンはヒンメルも同じように言い当てたことを思い出します。
何で自分は分からないのに、何で自分のことが分かるのか?
そんなどうしようのないほど鈍いフリーレンにフェルンはこう伝えます。
「あなたが私を知ろうとしてくれたことが、堪らなく嬉しいのです」
このフェルンとのひとときを過ごし、フリーレンは亡き勇者との思い出の痕跡を辿りヒンメル達のことを知ろうと、今一度強く気持ちを固めました。
第4章:中央諸国グレーセ森林 ~腐敗の賢老と魔法の進化~

(時期:勇者ヒンメルの死から27年後)
4.1 80年の時を超えた再戦
登場箇所:原作1巻第5話 / アニメ第3話
ヴァルムを後にした一行は、中央諸国グレーセ森林周辺の村へとやってきます。
この村には、80年前に勇者ヒンメル一行によって封印された強大な魔族、「腐敗の賢老」クヴァールが眠っていました。
かつてクヴァールは、魔王軍の中でも屈指の魔法使いとして恐れられていました。彼が開発した「人を殺す魔法(ゾルトラーク)」は、当時のあらゆる防御魔法や装備を貫通する圧倒的な破壊力を持っており、ヒンメルたちでさえ彼を倒しきれず、封印するのが精一杯だったのです。
4.2 魔法技術の進歩と「一般攻撃魔法」
フリーレンは、封印が解けかかっているクヴァールを完全に討伐することを決意します。
封印から目覚めたクヴァールは、自身の最強の魔法であるゾルトラークを放ちますが、フェルンはこれを基本的な防御魔法であっさりと防いでみせます。
クヴァールにとっての「必殺魔法」は、現代においては「一般攻撃魔法」として体系化され、基礎中の基礎となっていたのです。80年という歳月の間に、人類の魔法技術はクヴァールの魔法を解析し、それに対抗するための強力な防御魔法を確立していました。
「ゾルトラークはもう、人を殺す魔法じゃない」
フリーレンのこの言葉は、魔法技術の歴史と人類の努力を象徴しています。
4.3 過去の清算と未来への一歩
クヴァールは天才的な魔族であり、即座に現代の魔法を解析しようと試みますが、フリーレンはその隙を与えませんでした。彼女はクヴァール自身が生み出したゾルトラークを彼に向けて放ち、圧倒的な魔力で彼を消滅させます。
戦いの後、フリーレンはこの村の村長と言葉を交わします。彼は80年前、フリーレンのスカートをめくった悪戯っ子でした。
老いた彼との再会は、かつての冒険が確実にそこにあり、その続きを今のフリーレンが歩んでいることを実感させる温かいエピソードとなりました。
まとめ:動き出した時間と想い、追憶から未来へ

勇者ヒンメルの死から20年から27年後にかけてのこれらの旅路は、単なる「冒険の続き」ではありません。
シュトラールでのハイターとの別れ、
ターク地方でのヒンメルへの手向け、
ヴァルムでのフェルンの成長、
そしてグレーセ森林での過去との決着。
これら一つ一つの出来事が、フリーレンの中で止まっていた時間を動かし、彼女を「過去の英雄を知る者」から「未来へ想いを繋ぐ者」へと変えていきました。
フェルンという新たな希望と共に歩む彼女の旅は、ここからさらに北へと続いていきます。それは、亡き友との約束を果たすための「天国(オレオール)」への旅路の始まりでもありました。



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