はじめに：魂の眠る地を目指す、新たな旅の局面
勇者ヒンメルの死から29年の歳月が流れた頃、エルフの魔法使いフリーレンとその一行の旅は、中央諸国を越え、より厳しく、未知なる北側諸国へと深く分け入っていました。
魂の眠る地（オレオール）で亡きヒンメルと対話するという目的は、フリーレンにとって単なる旅路ではありません。
それは、ヒンメルという一人の人間を、ひいては短命な種族である「人間」そのものを理解し、自らの永い時間の中に確かな意味を刻むための、巡礼の様相を呈し始めていました。
当記事では、この壮大な旅の中盤、特にヒンメル没後29年という節目に焦点を当てます。
この時期は、僧侶ザインという新たな仲間との出会いと別れ、そして「一級魔法使い選抜試験」という大きな転換点を経て、パーティの結束と個々の成長が試される極めて重要な局面です。
フリーレンがヒンメルたちとの過去の記憶を現在にどう活かし、他者との関係性を築いていくのか、その内面の変化が色濃く描かれる北側諸国の歩みを、各地でのエピソードと共に詳細に追っていきます。
第１章：北側諸国・クラー地方 – 悠久の時を生きるドワーフとの再会 –
魂の眠る地を目指す旅の途中、フリーレン一行は北側諸国クラー地方にある小さな村を訪れます。
目的は、フリーレンが「長寿友達」と呼ぶドワーフの老戦士、フォル爺との再会でした。彼は、かつてフリーレンがヒンメルたちと冒険をしていた80年以上前にも出会った人物です。
村に到着した一行が目にしたのは、老いてなお、たった一人で村を魔物から守り続けるフォル爺の姿でした。彼が永い年月をこの地に捧げる理由は、遥か昔に亡くした人間の妻が心から愛した村だからです。
しかし、ドワーフの悠久の時の中で、その愛の記憶は残酷なまでに風化していました。彼はフリーレンに、愛した妻の顔も、声も、その眼差しさえも、もう思い出せなくなってしまったと寂しげに語ります。
さらにフリーレンは、フォル爺が外界から隔絶された生活を送るあまり、「魔王は80年前にヒンメルたちによって既に倒された」という事実を知らないことに気づきます。
その姿に、フリーレンは静かな決意を固めます。ヒンメルたちの記憶を未来へ運ぶことが自らの役割であるように、この友人の失われゆく記憶もまた、自分が未来へと連れて行くと約束するのでした。
一行はこの村に約10日間滞在し、その間、シュタルクはフォル爺から戦闘の稽古をつけてもらうことになります。フォル爺はシュタルクの構えを一目で見抜き、「戦闘での死因の多くは油断だ」と説き、防御を意識させるための実戦的な訓練を施しました。
このクラー地方でのエピソードは、物語全体の中心テーマである「記憶と忘却」を凝縮した、象徴的な出来事と言えます。
フリーレン（エルフ）とフォル爺（ドワーフ）は、共に人間より遥かに長命な種族であり、「長寿友達」という関係性がこの対比を際立たせています。フォル爺の行動原理が「亡き妻との約束」であるように、フリーレンの旅の根幹にも「亡きヒンメルへの想い」があります。
両者とも、死者との繋がりが現在の生きる指針となっている点で共通しています。
フォル爺が抱える「妻の記憶の風化」という苦悩は、フリーレンが最も恐れている事態そのものです。
ヒンメルたちとの大切な記憶がいつか薄れてしまうことへの恐怖こそが、彼女を「人を知るための旅」へと駆り立てる根源的な動機です。したがって、フォル爺の告白はフリーレンにとって、自身の未来を予見させる強烈な体験であり、旅の目的を再確認させるものでした。
彼女が「フォル爺の記憶も私が未来に連れて行ってあげる」と宣言したのは、単なる慰めの言葉ではありません。それは、自らの存在意義である「記憶の運び手」としての役割を、フォル爺という鏡を通して再認識し、より強く意識する行為だったのです。
また、シュタルクがフォル爺から受けた「卑怯な戦法」とも言える実戦的な教えは、彼の戦士としての成長における重要な布石となります。
これは後の技術的な修行とは異なり、精神的な隙をなくすための戦闘哲学の伝授であり、この時点でのシュタルクがまだ戦士として未熟な部分を抱えていることを示唆しています。
原作登場箇所: 4巻 第33話「フォル爺」
第２章：北側諸国・ローア街道 – 別れと、旅立ちのきっかけ –
クラー地方を後にした一行は、ローア街道沿いの集落に立ち寄ります。
ここで一行は、ザインが探し求める親友「戦士ゴリラ」の手がかりを得るため、村の「頑固婆さん」と出会いました。彼女の信頼を得るため、一行は様々な依頼をこなす中で、最終的に峡谷にある「忘れられた英雄の像」を磨くことになります。
その石像は、フリーレンも見覚えのあるエルフの武道僧「クラフト」のものでした。そして、この場所こそ、かつて幼いザインと戦士ゴリラが像を見上げ、歴史に名を遺す英雄になることを誓い合った、思い出の場所でもあったのです。
頑固婆さんの口から、戦士ゴリラが北側諸国中部の交易都市「テューア」へ向かったことがついに判明します。しかし、その街は一行が目指す魔法都市オイサーストとは全くの逆方向でした。
進むべき道が分かれた矢先、折悪しく集落は激しい寒波に見舞われ、一行はひと月もの間、足止めを余儀なくされます。
この予期せぬ停滞期間中、フェルンとシュタルクが些細ないたずらをきっかけに喧嘩をしてしまいます。フリーレンでは仲裁できず途方に暮れる中、パーティの年長者であるザインが、二人の話をそれぞれ丁寧に聞き、大人な対応で和解へと導きました。
やがて寒波が過ぎ去り、旅立ちの時が訪れます。ザインは迷いを振り切り、親友を追うため一行と別れることを決断しました。
フリーレンは、かつて冒険に踏み出す勇気がなかった自分とザインの姿を重ね合わせ、「きっかけを与えたかった」と語り、彼の新たな旅立ちを静かに見送るのでした。
ザインの離脱は、物語における「出会いと別れは死別だけではない」というテーマを体現する、最初の大きな出来事です。
彼は卓越した治癒能力を持つ僧侶としてパーティの生命線であっただけでなく、フェルンとシュタルクの子供じみた喧嘩を仲裁できる唯一の「大人」でもありました。彼の離脱は、戦力的な損失以上に、精神的な支柱を失うことを意味します。
これにより、残された3人、特に若いフェルンとシュタルクは、自分たちで問題を解決し、精神的に自立していくことを余儀なくされます。これは、フリーレンがより保護者としての役割を担い、人間関係において能動的になるための重要な転換点ともなりました。
また、この地で出会ったクラフトの像も象徴的です。
フリーレンはかつて生身のクラフトに出会っていますが、ここでは既に「名前も分からない忘れられた英雄」として風化しかけていました。この事実は、世界の時間スケールの壮大さと、いかなる英雄ですら忘れ去られるという無常観を示しています。
これはヒンメルの運命をも暗示しており、だからこそ、フリーレンが個人的に彼を「記憶」し続ける旅に、より深い意味が生まれるのです。
原作登場箇所: 4巻 第34話「忘れられた英雄」、第35話「旅立ちのきっかけ」
第３章：北側諸国・オッフェン群峰 – ヒンメルの優しさを未来へ運ぶ –
ザインとの別れを経て、再び3人となった一行は、白銀の世界が広がる北側諸国オッフェン群峰を進んでいました。
厳しい雪道が続く中、長旅の疲れからか、フェルンが風邪をひいて倒れてしまいます。
フリーレンは、かつてヒンメルたちとの冒険で薬草を採取した場所が近くにあることを思い出し、シュタルクと共に薬の材料を探しに出かけます。道中、80年前は村だった場所が小さな牧場に変わっているなど、時の流れの確かさを感じながら、一行は牧場主の助けを得てフェルンを休ませることができました。
看病の際、フリーレンは昔からの習慣で、安心させるためにフェルンの手を握ります。しかし、大人になったフェルンはそれを子供扱いされていると感じ、恥ずかしさからその手を振り払ってしまいます。その反応に、フリーレンは人の心の機微を理解しきれていない自分に少し戸惑いを見せます。
その後のシュタルクとの会話の中で、フリーレンは遠い記憶を呼び覚まします。それは、かつて自身が病に倒れた時、勇者ヒンメルが何も言わずに自分の手を握ってくれた思い出でした。
その時、ヒンメルはこう言ったのです。
「心の支えが必要なのは子供だけじゃない」と。
この言葉の真意を、フリーレンは今になってようやく理解します。それは、相手を子供扱いする行為ではなく、年齢に関係なく誰もが必要とする、純粋な思いやりだったのです。
ヒンメルから受け取った優しさの意味を悟ったフリーレンは、再びフェルンのベッドサイドへ向かい、もう一度その手を握ります。
そして、「子供じゃないって知ってるよ」と静かに告げました。
今度はフェルンも、フリーレンの真意を汲み取り、安らかな表情でその温もりを受け入れたのでした。
このエピソードは、フリーレンの「人を知る旅」が、単なる知識の蓄積から具体的な行動へと結実した、極めて重要なターニングポイントです。
最初の「手を握る」という行為は、過去の経験に基づく無意識の「習慣」でした。しかし、フェルンの拒絶という「失敗」を経て、ヒンメルの記憶を再解釈することで、その行為の裏にある「哲学」を学びます。
二度目の行為は、ヒンメルから受け継いだ優しさを理解し、実践する「意識的な行為」へと昇華されました。これは、フリーレンがヒンメルの記憶をただ思い出すだけでなく、それを現在の人間関係に応用できるようになった、彼女の成長を示す決定的瞬間と言えるでしょう。
原作登場箇所: 4巻 第36話「心の支え」
第４章：北側諸国・キュール地方から魔法都市オイサースト – 試練と成長の一大叙事詩 –
オッフェン群峰を越えた一行は、ついに北側諸国最大の魔法都市オイサーストに到着します。
この先の目的地である北部高原は、魔族の残党などによる危険から人の往来が厳しく制限されており、大陸魔法協会が認定する「一級魔法使い」の資格を持つ者の同行が義務付けられていました。そのため、フリーレンとフェルンは、この街で開かれる一級魔法使い選抜試験に挑むことになります。
オイサーストという名は、ドイツ語で「極度の」「最上の」を意味し、その名の通り魔法研究の最先端であり、大陸中から多くの魔法使いが集う中心地です。荘厳なゴシック様式の建築物が立ち並ぶ街並みは、これから始まる試練の格の高さを物語っているようでした。
一級魔法使い選抜試験
この試験は合格者が一人も出ない年もあるほどの難関であり、時には死傷者も出る過酷なものでした。試験は三段階に分かれていました。
- 第一次試験 (試験官：ゲナウ):
試験内容は、3人1組の即席パーティを組み、日没までに「隕鉄鳥（シュティレ）」という素早い鳥を捕獲することでした。ただし、パーティメンバーが一人でも欠ければ失格となるため、他の受験者との戦闘や交渉、協力が不可欠となります。
フリーレンは臆病だが努力家のカンネ、口は悪いが面倒見の良いラヴィーネと、フェルンは常に笑みを浮かべる危うい少女ユーベル、他者を信用しないクールな青年ラントとパーティを組み、それぞれのやり方で試練に臨みました。 - 第二次試験 (試験官：ゼンゼ):
舞台は、過去に幾多の冒険者が挑み踏破できなかった難攻不落のダンジョン「零落の王墓」。合格条件は、その最深部に到達することです。
この迷宮の主「シュピーゲル（水鏡の悪魔）」は、侵入者の記憶を読み取り、その実力・魔力・技術を完全にコピーした「完璧な複製体」を創り出す能力を持っていました。受験者たちは、自分自身と全く互角の複製体や、最深部で最強の敵として立ちはだかるフリーレンの複製体との絶望的な戦いを強いられました。 - 第三次試験 (試験官：大魔法使いゼーリエ):
最終試験は、大陸魔法協会の創始者であり、神話の時代から生きるエルフの大魔法使いゼーリエとの直接面接でした。
合否は、ゼーリエの魔法使いを見抜く直感によってのみ下されるという、絶対的なものでした。
シュタルクの修行
フリーレンとフェルンが過酷な試験に臨んでいる間、シュタルクもまたオイサーストの街で自身の鍛錬に励んでいました。彼は名もなき老人(武のおじいさん)に見守られながら、来る日も来る日も修行を続けます。老人は「お主に教えることはもう何もない」と言い、シュタルクと別れることとなりました。
一級魔法使い試験の主な受験者たち
この試験には、フリーレンたちのほかにも、多種多様な背景と実力を持つ魔法使いたちが集結しました。
| キャラクター名 | 等級 | 特徴・背景 |
| フリーレン | (無資格) | 千年以上を生きるエルフ。ヒンメル一行の魔法使い。 |
| フェルン | 三級魔法使い | フリーレンの弟子。ハイターに育てられた天才肌。 |
| ヴィアベル | 二級魔法使い | 北部魔法隊隊長。現実主義者だが仲間想いな一面も。 |
| ユーベル | 三級魔法使い | 常に笑みを浮かべる危うい少女。人を殺すことに抵抗がない。 |
| デンケン | 二級魔法使い | 宮廷魔法使いの地位を持つ老獪な実力者。 |
| ラント | 二級魔法使い | 他人を信用しないクールな青年。幻影魔法を得意とする。 |
| リヒター | 二級魔法使い | 魔法への知識が豊富な実力者。目的のためには手段を選ばない。 |
| カンネ | 三級魔法使い | 臆病だが努力家。ラヴィーネとは幼馴染。水系統の魔法が得意。 |
| ラヴィーネ | 三級魔法使い | 口は悪いが面倒見が良い。カンネとは幼馴染。氷系統の魔法が得意。 |
| メトーデ | (等級不明) | 治癒魔法を得意とするお姉さんタイプの魔法使い。 |
| エーレ | 三級魔法使い | 魔法学校を首席で卒業したエリート。 |
この一連の試験は、単なる強さ比べではなく、「魔法使いの在り方」そのものを多角的に問う試練でした。
第一次試験が「協調性と応用力」、第二次試験が「自己分析と信頼」、そして第三次試験が「魔法への哲学」を問うものだったと言えます。
特に第二次試験でフェルンがフリーレンの弱点を見抜き、仲間と協力して複製体を打ち破った場面は、己の弱さを認め、他者を信頼することの重要性を示す象徴的なシーンでした。
一方で、魔法使いたちの華々しい戦いの裏で描かれるシュタルクの地道な修行は、物語に重要な奥行きを与えています。「毎日同じことを繰り返す」という描写は、武の道に終わりはなく、日々の反復こそが本質であるという哲学を示唆しており、魔法の才能や閃きとは対照的な、もう一つの「強さ」の形を描き出していました。
原作登場箇所: 4巻 第37話「一級試験」～7巻 第60話「旅立ちと別れ」
第５章：北側諸国・ザオム湿原 – 魔法が封じられた洞窟での試練 –
数ヶ月にわたる一級魔法使い試験を終え、フェルンが見事合格を果たした後、一行はオイサーストを旅立ち、北部高原を目指します。彼らが次に進んだのは、ザオム湿原に存在する洞窟を通り抜けるルートでした。
しかし、この洞窟は特異な性質を持っていました。内部の岩盤が、魔法の効果を完全に打ち消す「封魔鉱」で形成されていたのです 。これにより、フリーレンとフェルンという二人の強力な魔法使いは、その力を完全に封じられてしまいます。
魔法が使えない絶体絶命の状況で、一行は洞窟に潜む魔物の襲撃に遭います。フリーレンとフェルンが窮地に陥る中、パーティ唯一の前衛であるシュタルクが、二人を守るために奮闘し、その斧で道を切り開いていくのでした。
このエピソードは、直前の長大で複雑な「一級魔法使い試験編」の後に配置された、極めて重要な意味を持つものです。
試験の間、物語の主役は魔法使いたちであり、シュタルクは戦闘の蚊帳の外に置かれていました。その直後に「魔法が一切使えない」という極端な状況を設定することで、物語のパワーバランスは意図的に逆転させられます。
大陸でも屈指の魔法使いたちが無力化される中で、シュタルクの物理的な強さが唯一の希望となるこの展開は、彼の存在がパーティにとってどれほど不可欠であるかを、これ以上なく明確に示しています。
これは、物語が再び3人での旅の原点に戻ったことを示す、構成上の巧みな「リセット」の役割を果たしており、パーティにおける各々の役割と絆を再確認させるエピソードとなっています。
原作登場箇所: 7巻 第61話「封魔鉱」
第６章：北側諸国・ザンフト大森林 – 再会が示すそれぞれの道 –
ザオム湿原の危険な洞窟を抜けた一行は、北部高原への入り口に広がるザンフト大森林へと足を踏み入れます。森の中には、一方は港町へ、もう一方は目的地である北部高原へと続く、大きな分岐点がありました。
その運命の分かれ道で、一行は予期せぬ人物と再会します。
それは、一級魔法使い試験で時には共闘し、時には敵対した魔法使い、北部魔法隊隊長のヴィアベルでした。試験中のような殺伐とした緊張感はそこにはなく、過酷な試練を共に乗り越えた者同士の、穏やかな会話が交わされます。
ヴィアベルは彼の仲間と共に、また別の任務へと向かう途中でした。互いの旅の安全を静かに祈り、彼らはそれぞれの信じる道へと別れていきました。
このヴィアベルとの短い再会は、長かった一級魔法使い試験編の真のエピローグとして機能しています。
試験中の彼らは、互いに警戒すべきライバルであり、生存を賭けた敵でした。しかし、再会したヴィアベルの態度は穏やかで、フリーレンたちを対等な「同業者」として扱っています。
この変化は、過酷な試練を共有したことで、受験者たちの間に単なる利害関係を超えた、確かなリスペクトと戦友のような感情が芽生えたことを示しています。
ザインとの別れがそうであったように、旅の途中で人々の道は交差し、そしてまた離れていく。この静かな再会と別れは、その人間関係の美しさと儚さを描き出し、試験編という大きな物語の終わりを静かに告げる、象徴的なシーンなのです。
原作登場箇所: 7巻 第62話「それぞれの道」
まとめ：中盤の旅がフリーレンにもたらしたもの
勇者ヒンメルの死から29年後という、この北側諸国を巡る一連の旅は、フリーレンの内面に極めて大きな変化をもたらした期間でした。
フォル爺との対話を通じて、彼女は自らの「記憶の運び手」としての役割を再確認しました。
ザインとの出会いと別れは、永遠ではない繋がりの尊さと、旅立ちのきっかけを与えることの意味を教えました。
そして、フェルンの看病という出来事は、ヒンメルから受け取った優しさを、他者への意識的な行動として実践する、大きな一歩となりました。
中でも、一級魔法使い試験という壮大な試練は、彼女に新たな人間関係をもたらし、多種多様な魔法使いたちとの交流を通じて、自身の魔法への哲学を改めて問い直す機会を与えました。シュタルクの揺るぎない存在価値を再認識したことも、パーティの絆をより強固なものにしたでしょう。
この中盤の旅を経て、フリーレンはもはやヒンメルの記憶をただ抱えるだけの存在ではなくなりました。その記憶を能動的に解釈し、現在の仲間たちとの関係をより豊かにするために活かす術を、彼女は確かに学び始めています。
彼女の「人を知るための旅」は、この北側諸国での道のりを経て、より深く、より確かな歩みとなって、魂の眠る地へと続いていくのです。
旅の軌跡：ヒンメルの死から29年後(中盤)の行程概要
| 旅の行程 | 主な出来事 | 原作登場箇所 |
| 北側諸国・クラー地方 | フリーレンが「長寿友達」のドワーフ、フォル爺と再会。シュタルクがフォル爺から戦闘の稽古を受ける。 | 4巻 第33話 |
| 北側諸国・ローア街道 | 頑固婆さんからザインの親友「戦士ゴリラ」の情報を得る。寒波でひと月足止めされ、その後ザインが一行と別れる。 | 4巻 第34話～ 第35話 |
| 北側諸国・オッフェン群峰 | フェルンが風邪をひく。フリーレンが看病を通して、かつてヒンメルに手を握ってもらった記憶を思い出し、その優しさの意味を理解する。 | 4巻 第36話 |
| 北側諸国・キュール地方からオイサースト | 北部高原へ向かうため、フリーレンとフェルンが一級魔法使い選抜試験を受ける。シュタルクは「武のおじいさん」と修行に励む。 | 4巻 第37話～ 7巻 第60話 |
| 北側諸国・ザオム湿原 | 魔法を無効化する「封魔鉱」の洞窟で魔物に襲われる。魔法を封じられたフリーレンとフェルンを、シュタルクが守り抜く。 | 7巻 第61話 |
| 北側諸国・ザンフト大森林 | 港町と北部高原への分岐点で、一級魔法使い試験で出会ったヴィアベルと再会し、互いの道へと別れる。 | 7巻 第62話 |
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